哲学的思考~Philosophical Thinking

~よりよく生きるために、自分自身を見つめ直す~

罪を憎んで人を憎まず

 
「罪を憎んで人を憎まず」、
という言葉があります。
 
 
 
これは、
「行為を憎んで、人を憎んではいけない」、
というもので、
 
 
罪を犯した人は、
何かしらの事情があって、その行為に及んだのだから、
その人自身まで憎んではいけない、
 
という趣旨を表現しています。
 
 
 
 
この言葉の意味するところは、
確かに一つの真実ではあるとは思いますが、
 
 
少し見方を変えれば、
 
 
そもそも、行為というのは、
その人の意志に基づいて行われるものであって、
 
行為と人とを切り分けられるものではないとも言えます。
 
 
 
行為が則ち、人である、と見た場合、
 
「行為を憎んで、人を憎まない」、
というのは、成立しないと言えるのです。
 
 
 
 
 
そして、
 
憎む、というのは、
 
その対象が何であろうと、
自分が赦せない感情になっているわけで、
 
 
この感情になってしまっている自分が、
他の誰よりも一番傷ついてしまっているのです。
 
 
 
憎んではいけない、というのは、
 
誰かのためではなく、
他ならぬ、自分のためなのです。
 
 
 
 
 
ですので、
 
結局のところ、
「何一つ憎んではいけない」、
 
 
というのが、
この言葉における別の見方なのではないかと思うのです。
 
 
 
 
 
私達は、
自分自身が何か誤った行為をしてしまった時、
 
 
その行為自体を反省はするものの、
 
 
その行為をしてしまった自分に囚われて、
いつまでも、
 
自分が赦せなくなったり、
自分自身を否定してしまうことがあります。
 
 
 
 
「何一つ憎んではいけない」のは、
自分に対しても同様で、
 
 
自分をまるごと赦し、
 
どんな自分であっても、
全て受け入れることが必要だということなのです。